入居者の声

私の終の住処

平成8年の暮れに家内が急逝して以来、一人暮らしの私が久しく探し求めてきた安住の住処に、傘寿を迎えたこの夏にやっとのこと辿り着くことができた。

盛岡市の中心部に瀟洒な姿を見せている、アンビシャスシティ志家がそれである。

この施設に入居するまで私は、社団法人全国老人ホーム協会に加入するなどして、その情報を便りに関東地方、時には遠く越前の地にまで足を伸ばしてのホーム探しであった。

しかしつまるところ何れも帯びに短し襷に長しで、私が求めるような施設には巡り会えずじまい。もちろん時にはこれは思うホームもあったが、入居一時金が私の資力では逆立ちしても追いつかなかったり。あるいは通院に明け暮れる私にとって、医療機関が遠くて不便など、なかなか思いどおりの施設にたどり着かないままに時が経過してしまった。

しかも施設探しに際して心底残念に思ったことは、関東以南の各県にはこのような施設が多数存在するものの、一歩白河の関を越えた東北地方には殆ど皆無の有り様。

私が施設を探し求めた今から10年も以前は、東北地方には宮城、福島の両県に各1施設が存在するのみで、当岩手県はもちろん他の東北各県には皆無のありさま。

その後宮城、福島の両県に1か所づつ、さらに山形県に1施設が開所したものの、岩手、秋田、青森の各県には依然見られずじまい。しかも津軽海峡を越えて北海道に渡れば、函館、札幌、旭川などの周辺にはそれぞれ数箇所の施設が見られるなど、東北地方の老人施設の乏しさは勿論、その関心の低いことを痛感させられるばかりであった。

そのような状況のなか、一昨昨年の平成17年、秋田市内に施設新設の情報を入手した。設置場所も市の中心部で通院にも便利と推察されることから、岩手県にこのまま将来ともに施設建設の見通しが立たないのであれば、秋田への移住も仕方ないなと考えていたその折、昨平成18年6月10日の岩手日報紙上で、平成19年盛岡市の中心部に1階はスーパー、その上層部は有料老人ホームの複合ビルが建設されるとの記事を目にした。

それこそ待ちに待った待望のニュースである。しかもその計画内容は、高齢者が安心して楽しく生活できるよう娯楽、運動等の設備も備えたシルバーマンションで、食事サービスは勿論、看護師等の配置や病院との提携等、私にとって待ち望んでいた施設であった。

早速建設を計画しているランデック都市開発社から、その計画資料を取り寄せるなどして待つこと1年、本年7月に完成、そして8月1日待望の入居と相成った次第。

今入居して3カ月、朝ベランダ側のカーテンを開ければ、目前に緑滴る美しい森に囲まれた、当盛岡市鎮守の社お八幡さんが眼前に鎮座し、思わず最敬礼。

その左には、幼少の時から憧れ親しみ、また望郷の歌人石川啄木も散策したという、盛岡市の母なる山、標高341メートルの岩山が穏やかな姿でゆったりと迎えてくれる。

この自然に恵まれた美しい環境の下、施設の暖かい手に支えながら送る日々、これこそ私が長い間待ち望んでいた終の住処そのものではなかろうか。

住み慣れし家を離るる夏の果て
ロビーには引っ越し迎ふ菊一輪

(平成19年11月)